NEXTA MAGAZINE

NEXTA MAGAZINE

/ 2019.10.25

  • 土地のこと

私道負担面積について、実際のトラブルから注意点を解説

私道負担についての知識がないまま土地を購入すると、希望どおりの建物を建築できないばかりか、近隣トラブルになる可能性もあります。問題が表面化しなければ私道負担の注意点について説明をしてくれない不動産屋もいます。

こんなはずじゃなかったと後悔しないように、事前に私道負担についてしっかり理解しておきましょう。この記事では私道と公道の違いや私道負担について詳しく解説します。また、私道負担において多いトラブル事例などもご紹介します。

私道と公道の違いは所有者

道路には「公道」と「私道」があります。国や自治体が所有している道路が公道と呼ばれるのに対し、個人や企業、団体が所有する道路(通路)のことを私道と呼びます。市道(しどう)と区別するために「わたくしどう」と読まれることもあります。

私道は、地主が単独で所有する場合と、近隣住民で共有している場合があります。公道の道路整備は国や自治体が行いますが、私道は私道所有者が行います。

 

私道の種類(建築基準法上の道路)

私道負担について理解する前に、私道の種類を知っておくことも重要です。ここでは、私道の種類(建築基準法上の道路)を紹介します。

・1項3号道路(建築基準法42条1項3号道路)

建築基準法が施工された昭和25年11月23日にすでに存在した幅員4m以上の道路のことです。[注1]わかりやすくいえば「昔から利用されていた道」です
なお、1項3号道路と認められる道路であっても、部分的に幅員が4m未満の場所があった場合、その部分に面している土地で建築する場合はセットバックが必要となります。詳細が気になる方は、役所などで確認してみましょう。

・1項5号道路(建築基準法42条1項5号道路)

1項5号道路とは、建築基準法上の道路のひとつで「位置指定道路」と呼ばれているものです。[注2]特定行政庁が道路位置の指定をした幅員4m(6m)以上の私道です。
なお、道路の築造後に行政へ移管された位置指定道路もあります。その場合は私道ではなく公道となります。

・2項道路(建築基準法42条2項道路)

建築基準法第42条2項の規定により、建築基準法上の道路とみなされた道のことを「2項道路」といいます。
[注1]「みなし道路」とも呼ばれています。
現行の基準法の規定では、都市計画区域においては敷地が幅員4m以上の道路に接していなければ原則として建物は建築できませんが、建築基準法が施行された昭和25年当時、多くの建物は現行の基準を満たしていない敷地に建物を建築していました。

このような建物をすべて解体する際の経済的損失を防ぐため、「幅員4m未満の道路でも、特定行政庁が指定した道路は建築基準法上の道路とみなす」という措置がとられたのです。

この「2項道路」(みなし道路)に接した敷地の場合、道路中心線から2mまで敷地を後退(セットバック)させることで建築が可能となります。また、道路の反対側が河川などの場合はその境界線から4mの一方後退となります。

・3項道路(建築基準法42条3項道路)

3項道路とは、建築基準法第42条3項の規定により、建築基準法上の道路とみなされる道のことです。
[注1]3項道路と呼ばれています。
2項道路と同様ですが、土地の状況により2項の規定で定められた後退が困難な場合に、特定行政庁が後退距離を道路の中心から1.35m以上2m未満の範囲で指定します。このケースが3項道路です。

・建築基準法43条・ただし書き道路

建築物の敷地は、建築基準法第43条第1項により、道路に2m以上接しなければなりませんが、道路に接していない敷地であっても、敷地の周囲の状況および建築物の条件により、建築を許可される場合があります。
このことを「建築基準法43条第1項ただし書きの規定に基づく許可」といい、この許可を要する道路を「ただし書き道路」と呼んでいます。

[注1]ただし書きの適用を受ける場合は特定行政庁の許可が必要です。適用基準に満たない場合は許可されない場合もあります。

[注1]e-Gov:建築基準法
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000201#485

私道負担は建築基準法により定められた「接道義務」による

建築基準法では「幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない」という条件を満たしていなければ建物を建築できない規定があります。「接道義務」とも呼ばれるものです。この接道義務を果たすためには、敷地の一部を私道にして道路の幅を4m以上に広げる必要があります。これが私道負担です。ここでは私道負担について詳しく解説します。

どうして私道負担があるの?


私道負担が必要なケースはさまざまですが、広い土地を分割して売りに出す分譲地、奥まった場所に建物を建築する場合などが一般的です。

私道の中には、建築基準法における道路の種別としての私道もありますが、建築の許可を得られない私道もあります。たとえば、路地状敷地(敷地内の路地状部分のみ道路に接する土地)の道路の部分は、建築基準法の中で「通路」「道」という扱いになります。この場合は家を建てられません。

これは、建築基準法による規定で「幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない」と定められているためです。「接道義務」とも呼ばれます。災害時に救助活動の妨げにならないよう、緊急車両がスムーズに通行できる道幅を確保するためです。この接道義務を果たすためには、敷地の一部を私道にして道路の幅を4m以上に広げる必要があります。これを私道負担といいます。

ちなみに、幅員4m未満の道路でも建築が認められる場合もあります。
建築基準法ができる前から利用されている道路の中には、建築基準法上の道路として認められている道路もあります。この場合は、道路中心線から2mまで敷地を後退(セットバック)させることで建築が可能となります。(建築基準法42条2項道路)

私道は原則として固定資産税がかかりますが、道路として多くの一般の人に利用されていると認められれば、その部分についての固定資産税を減免される点が私道のメリットとして挙げられます。

 

私道負担の内容は1つではない

私道負担の内容は1つではありません。いくつかのケースを見てみましょう。

・購入する土地の一部が私道負担面積になっている場合

宅地建物取引業法では、不動産広告に私道負担面積・セットバック面積について明記しなければならない規定があります。不動産広告の中で「私道負担あり」「セットバック要」という表記を見たら、必ず負担面積などを確認しておきましょう。
私道負担とセットバックの敷地には建物を建築することができません。駐車場や門を作ることも禁止されています。容積率・建ぺい率の敷地面積には含まれないため、希望する建物が建築可能かどうか、庭や駐車場のスペースは確保できるのか、次に建て替えする際は現状どおり建築可能なのかなど、詳細を確認しておくことが重要です。

そして、購入する土地の状態もよく確認しておきましょう。私道は所有者全員が管理・維持していかなければなりません。もし現地の私道が整備されていない荒れた状態なら、今後私道の所有者同士で問題点の話し合いや費用の負担が必要になる可能性があります。また「この道路はうちの土地だから通るな」と通行を制限している世帯や、私道に鉢植えや倉庫を置いたり、駐車をしている世帯もいるかもしれません。このような世帯がいる地域ですと後々トラブルに繋がりやすいため、事前に現地の状況を確認しておきましょう。

・敷地に接している道路が位置指定道路になっている場合

広い土地を数区画に分割して家を建てる場合、その敷地を分割して複数の戸建住宅を作ります。敷地の奥に建つ住宅まで行き来するためには道路を作る必要があります。その道路が位置指定道路です。
不動産会社が位置指定道路を所有している場合もありますが、近隣住民が分割して所有していることがほとんどです。所有者が複数いる場合は共同で管理する必要があり、道路工事などの問題が生じたときに意見がまとまらずにこじれてしまうケースや、通行をめぐってのトラブルも多いです。

・位置指定通路が認められる場合

位置指定道路とは、道路を作る位置の指定を受けて整備された道路のことです。位置指定道路と認められると、接道義務を果たしていることになり、家を建てられるようになります。(建築基準法42条1項5号)
位置指定道路の申請を行う場合は、まず公図や測量図などを用意して役所の建築安全課に相談しましょう。事前相談の回答で問題がなければ申請書類を作成し、私道権利者の承諾を得て申請します。審査が通れば道路工事、現場の検査が行われます。検査に通れば位置指定道路に認められるという流れになります。

位置指定道路の認定を受けるためには、各特定行政庁で技術基準が定められています。

*1.幅員が4m以上であること
*2.道路境界が明確になっており、排水設備があること
*3.原則として通り抜け道路であること(行き止まり道路の場合は35m未満)
*4.認定には私道権利者の承諾が必要
*5.角切をすること
などがあります。

また、位置指定道路は、たとえ所有者であっても位置指定道路上に自由に建物を建築できないなどの制限があります。私道の変更または廃止が制限される場合として、建築基準法第45条に「私道の変更または廃止によってその道路に接する敷地が第43条1項の規定または同条第2項の規定に基づく条例の規定に抵触することとなる場合においては、特定行政庁はその私道の変更または廃止を禁止し、または制限することができる」とあります。

「私道負担あり」の土地や不動産を購入する際の注意点

私道負担のある土地や不動産を購入する際には、以下3つのポイントに注意しましょう。

 

1. 私道負担面積・セットバック面積を確認する

私道負担とセットバックの敷地には建物を建築することができません。また、建ぺい率や容積率にも含まれないため、希望どおりの建物を建築できない可能性もあります。宅地建物取引業法では、売主が買主に対して私道負担面積やセットバック面積を告知しなければならない義務がありますが、実際は不動産広告の中で「私道負担あり」「セットバック要」という表記だけで済ませている不動産会社もあります。このような表記を見たら、必ず詳細を確認しましょう。

 

2. 将来、維持管理の負担金が発生する可能性がある

私道の管理と維持は私道所有者が行うため、その費用も私道所有者が負担することになります。不動産購入時に「負担金なし」となっていても、将来的に道路の舗装などの費用負担が必要になる可能性があります

たとえば水道管が破損したとき、公道の場合は水道局が管理しているため費用がかかることはありません。しかし私道の場合は私道所有者全員で費用を負担する必要があります。道路の舗装なども同様で、トラブルが発生しやすい問題です。いつどの程度の負担が発生するか予想できないことではありますが、将来的に維持管理の負担金が発生する可能性がある、と考えておくとよいでしょう。

 

3. 私道所有者から通行・掘削の同意を得ておく

私道の所有者は、私道の通行の制限、通行承諾料の請求、ガス管や水道などの掘削の制限をすることができます。実際、私道におけるトラブルで一番多い問題ではないでしょうか。このようなトラブルを避けるため、土地や不動産購入前に私道所有者から通行・掘削の同意を得ておくという方法があります。ここをあやふやにしておくと、将来的に近隣トラブルが発生するだけではなく、資産価値が減ってしまう可能性があります。

私道の所有者に私道の通行・掘削承諾を求める場合は、以下の3点が重要なポイントです。

*1. 本物件における私道を無償にて通行すること(車両を含む)
*2. 本物件におけるガス管、水道管、下水管など、生活に必要な設備を設置する場合、その私道を無償で掘削することを私道所有者が承諾すること(ただし、工事をした人は、その私道を自分の費用負担で原状復旧すること)
*3. 本物件を第三者に譲渡する場合、上記2点について承継すること。

まとめ:「私道負担あり」の場合は、事前の確認・内容把握が重要!

私道負担のある土地や不動産を購入する場合は、私道負担面積やセットバック面積、私道の種類を必ず事前に確認しておきましょう。私道の種類や規定がさまざまで混乱しがちですが、購入後に後悔することのないようしっかりと内容を理解することが重要です。

施工実績ギャラリー施工実績ギャラリー
クラブネクスタ登録フォーム
施工実績ギャラリー
PAGE TOP