人と住まいのコラム
「家づくりのホンネ」が紹介する理想の地震に強い家の構造~耐震・免震・制震~

地震に強い家の構造~耐震・免震・制震~

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家づくりのホンネ

関西エリアに大打撃を与えた阪神大震災や、日本列島に未曾有の被害をもたらした東日本大震災は多くの方の記憶に鮮明に残っているかと思われます。 日本では建物の倒壊を招く規模の大地震が頻発しており、この国で暮らす以上、どこに住んでいたとしても万全の対策を徹底することが求められます。その1つとして挙げられるのが地震に強い構造の家づくりです。近年、耐震は多くの方に認知されてきましたが、その他にも免震・制震などの構造があることをご存知でしょうか。

地震に耐えるために重要な建物の強度

熊本や鳥取など各地で大地震が発生した2016年は、気象庁によると国内で発生した震度1以上の地震は実に6587回。この数字は過去10年間(2007~16年)で東日本大震災があった2011年に次ぐ2番目に多い結果となっています。しかも熊本地震にいたっては、比較的地震に強いとされていた九州地方で発生しただけに、日本全国どこに住もうと地震の脅威からは逃れられないことを意味しています。

日本が世界でもトップクラスの地震大国であることは議論の余地もないので、重要になるのはどう地震対策にどう取り組むかということです。中でも重要視されるのが地震に対する建物の強度。建物が大地震にも耐えうる強度を備えていたら、それだけで大災害が起こった際に命の危険にさらされる可能性が低くなります。単純なことではありますが、“地震に強い家”に住んでいれば、それがもっとも身近でできる災害対策だと言えるでしょう。

“地震に強い家”を選ぶためには、まず建物の構造を知ることから始めることが大切です。建物を地震から守る構造には、地震に耐える「耐震」、地震を免れる「免震」、地震の揺れを制御する「制震」の主に3タイプが存在します。地震から身を守れる家を選ぶためにはそれぞれのタイプを熟知し、そのうえで家選びをすることが大切です。

耐震・免震・制震の構造の違いとは

度重なる大地震を経験してきた日本では、地震に強い家を実現すべく、建築技法を日々進化させてきました。強い揺れに対しても耐えられる耐震構造は基本中の基本ですが、近年では地震エネルギーを分散することで建物の倒壊や損害を防ぐ技法にも注目が集まっています。それが「免震」と「制震」です。耐震・免震・制震のそれぞれの比較は以下の通りです。

耐震 建物の強度を高めることによって地震に耐えるつくりを実現することを目指した構造です。建築基準法に則った地震対策として取り入れられているもっともメジャーな建築技法になります。主な方法としては壁の量の増加や接合部の強度アップなどが挙げられます。
免震 地震の揺れがダイレクトに建物に伝わるのを免れることを目的とした構造です。ゴムやボールベアリンングなどの免震装置を用いて地面からくる地震の揺れを直接的に建物に伝わらないようにすることで、家が地震の後を追ってゆっくり揺れます。そのため、家に伝わる揺れが弱くなり、家が傷みにくくなります。
制震 地震の揺れを吸収し、エネルギーに変換することを目的とした構造です。耐震構造と同様、しっかりと土台と家を固定しているため、免震と異なり、地震の揺れはダイレクトに伝わります。しかし、外壁と内壁間に「制震ダンパー」という装置を取りつけることで揺れを吸収でき、建物が受けるダメージを軽減できます。

上記のように地震に耐えるための強度を高める「耐震」と、建物の倒壊や損傷を防ぐために地震エネルギーの分散を目的としている「免震」「制震」には、構造の違いが存在します。一口に地震対策と言っても、さまざまな手法が存在するので、まずはその目的を理解しましょう。そうすることで地震に強い家を選ぶ際に明確な軸を持って判断することができます。

それぞれの要素を複合した住宅の存在も

耐震・免震・制震とそれぞれの構造の特徴は異なりますが、それぞれの長所を組み合わせることでより、地震に強い家を実現する複合住宅も存在します。最近では、耐震と免震を組み合わせたり、耐震と制震を組み合わせたりする家も一般的になりつつあるようです。

その中でも多く見られる複合パターンは「耐震×制震」。免震は設置する装置の規模が大きくなるため、より大きな建物に用いられる傾向があります。一方、耐震や制震は免震ほどコストもかからず、家そのものの強度を高め、揺れを吸収することで大地震でも住まう人々を守ってくれる安心の構造パターンとして多くの方に選ばれています。

日本で家を購入するうえで地震対策は不可欠な要素になるので、土地の広さや建築にかかる費用などを含めて適切な構造タイプを選択することが大切です。耐震・免震・制震と3つの特徴を踏まえ、適切な住宅構造を選択しましょう。

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