独創的、でも住まう人の個性と調和する。設計士の哲学が生むノームコアな建築

住む人のセンスに調和する空間を意識しています――。
そう語るのは、独創的でありながら、決して住まう人の色を邪魔しない存在感。究極のシンプルさから生まれる機能美にこだわる設計士の本山さん。
本山さんの作る家は、さながら上質なキャンバスと表現できるでしょう。作り手と住まう人、二つの感性が調和し、唯一無二の存在感を生み出します。
無駄を省いたデザインの研ぎ澄まされた美しさと、合理性のある動線にこだわり抜く設計士、本山さんにその思いを語っていただきました。
interviewee:(設計士 本山 偉武樹)
暮らしの中に溢れる建物やデザイン、空間の在り方への興味が強い本山さん。大学卒業後に不動産会社にて経験を積み、よりお客様の暮らしに寄り添ったこだわりを表現できる大興ネクスタへ。入社後はModula深沢で設計士として初めて現場を担当。こだわりを含めながらも、住む人の色を引き出すベース創りが得意。プライベートでは1児の父でもある。
日常に紛れたデザインから得るインスピレーション

ハイセンスなファッションの世界で浸透したノームコア(Normcore)というスタイル。これは「徹底的に核心を突いた、普通」という意味の言葉で、言い換えれば「考え、こだわり抜いたシンプル」と表現できます。
無駄を削ぎ落とし洗練された空間づくりへのこだわりを持つ本山さんの家づくりは、一つのことに徹底的に向き合う姿勢から生まれたもの。
「日常にヒントはたくさんある。何気なく過ごす中でも感情が動くデザインは多いです。無意識に集中し、創造力が働きます。
子供のころから建物や間取りを見るのが好きで、それを職業にすることができた今、家づくりは趣味の延長のように、とても楽しんでやっています」
こう語る本山さんの視点は、誰もが見過ごしてしまう些細な美しさや可能性を新しい形で表現します。彼の発想は予想外の角度から生まれ、絶えず進化する豊かなデザインを生み出しているのです。
休日にも、出かけた先のカフェや雑貨店でついつい建物の細部に目がいき、写真を撮ることも多い本山さん。日常のなかで、息をするようなインプットが行われ、そこから彼の設計する外観や間取り、内装が、個性豊かなアウトプットとして生み出されていくのがわかります。
全体のリズムと調和を愉しむ。世界でここだけの空間


シンプルでありながら印象的な立体構成は、見る角度によって新たな表情を見せる遊び心のある外観です。2つの建築が独立しながら、互いの魅力を引き出し合い、調和を奏でています。
「一つ一つ環境に応じて調整していますが、全体でひとつの世界観を表現できるようにバランスを意識して設計しました。縦の印象が強くなるようにも意識しています。窓の配置なども、工夫しました」

複数棟を設計する際は、個性を出しながらも全体の調和を意識するという本山さん。両者のバランスや魅せ方、そのエリアにだけ流れる特別な空気感を演出します。
一方、独立した個性を生み出す「等々力」では、角度によって表情が変わる立体的かつ独創的な外観が特徴。リズミカルなキューブに調和が存在し、ひとつのアートとして街を彩ります。

Modula世田谷等々力 外観
「かたまりが4つあるイメージ。ゾーン別に色が分けてあって、効果を狙ったのはボリューム感ですね。シンプルでありながらインパクトを出したかったんです。」
「終わりなく続く空間」をイメージしたリビングにはメインとして存在するアイコンが必要だった

キッチン背面・パントリーの奥まで真っ直ぐに途切れず続くグレーの壁面と天井が部屋の奥行きを強調し、空間の広さが感じられる設計。明るさを取り入れるために一切の妥協を許さず設えた大きな窓。これらが黒いサッシの存在によって引き締まりスタイリッシュな印象になっています。

「サッシの枠を黒くしたので一体感が生まれるように窓側のクロスはグレーにしています。」

キッチン背面で、存在感を放つ回遊型のパントリー。思い切ったデザインに感じますが、この構想は初期からあったものだそう。
「何かインパクトのあるアイコニックな存在を、と考えました。裏は備蓄倉庫になっていて、面積緩和しつつ利便性を意識して回遊動線のパントリーになっています」
オブジェのような存在感を放つパントリーにも、このような論理が隠されていました。本山さんの設計は、飾り足していく装飾ではなく、「そこに必然的にあるものを魅せる」というロジカルさが特徴。そして、ディテールに徹底したこだわりがあるためにアートとして存在している。そのような引き算の美が感じられます。

高く立ち上がったバルコニーの手すり壁は、周囲からの視線を遮る効果が。視線を気にせずに過ごせる安心感。プライバシーはもちろん、大きな窓から入る自然光のおかげで圧迫感はありません。
玄関とリビング|必然的に生まれた空間の余白と計算されたバランスの関係性

実績ギャラリー|Collection No.076 Modula深沢ⅡA
「この家の間取りならではの天井高を有意義に使いたかったんです」
天井高を活かした玄関。壁面にインパクトをもたせて縦の空間を強調しながら、フロートカウンターが奥行きを意識させます。

広い玄関の「理由」はこちらのスキップフロア。この間取りだからこそ思い切った天井の高さを実現できました。
リビングの縦のラインを強調する高い壁は、インパクトを与える役目も。
アクセントウォールテレビウォールの背面には、計算された縦のラインが静かな存在感を放っています。
極限までそぎ落とされたシンプルな空間に、さりげなく、しかし確かな主張を携えて溶け込むそのデザイン。まるで一枚の抽象画のような洗練された縦のストライプは、シンプルな設えのアクセントに。

実績ギャラリー|Collection No.076 Modula深沢ⅡB
印象的な吹き抜け玄関は、「これありき」の設計ではないそう。
「リビングをいかに広くするか、開放的にするかを突き詰めた結果として、贅沢な玄関になりました。」
玄関から続く縦格子の手すりが、縦に広がる空間をより一層際立たせます。

実績ギャラリー|Collection No.076 Modula深沢Ⅱ
「クロスは床材の色に合わせてグレージュで明るく落ち着いた雰囲気に。一方で窓枠や照明には黒で統一しています。照明がついていないときもデザインの一部になるように意識しました。格子状の手すりは落下防止も兼ねて、細かく縦に配置しました。縦の印象を強調する効果も狙っています」
必要なものだけを配置し、そこにスタイリッシュなデザインを施す。設計士の感性が表現された内装です。
究極のシンプル。だからこそディテールに宿る物語

実績ギャラリー|Collection No.076 Modula深沢ⅡA
一見シンプルに見えるその佇まいの背景には、幾重にも重なる緻密な思想が息づいています。
理想の生活を完璧に演出する無駄のない動線計画。「間」「余白」を活かし、凛とした気品を湛える空間構成。
「今この瞬間瞬間を楽しめる家を意識している」
そう語る本山さんの設計は、シンプリシティを追い求めながら、随所に遊び心という密やかな驚きが散りばめられています。
そこには、住まう方の個性を引き立てることだけを考え抜かれた素材選びと、永く愛されるデザインが。本山さんが創り出す邸宅だけが持つ、唯一無二の物語なのかもしれません。
「シンプルなものが好きです。以前からモノトーンが好きで『誰もが選べる』『誰の邪魔にもならない』という部分がいいなと思います。」
憧れる建築家も参考にする有名建築も「ない」と答える本山さん。意外だったのが、常にあるのは、「誰にでも好まれるようなものづくりがしたい」という思いだそうです。
強い主張を感じる設計でありながら、利便性や住み心地の良さが前に出ているのはこのあたりに秘密がありそうです。

Modula世田谷等々力 内装
リビングの高天井を彩る個性的なルーバー。照明として、空間を彩ります。

付け加える装飾でなく、そぎ落とした先に、必然としてそこにある形状を活かし、主張を持たせる。
「昔からシンプルでノーマルなものが好きです。余分なものがあるのが苦手で、要らないものはすぐに捨てたくなってしまう」という本山さんの感性が生み出すのは、「核心」をつらぬく究極の「ノーマル」を感じる家です。

螺旋階段下のスペースには、明り取りの窓と植栽スペース。特筆すべきは壁面の檜を使ったパネルです。贅沢な余白がある空間からは非日常を感じられます。

建築中の作品
本山さんが現在取り掛かるのは、中庭をぐるっと取り囲むスキップフロアの家。傾斜のある土地の特徴を活かす、遊び心のある設計に期待が高まります。
若手設計士のゆるぎない「自分軸」が住まう人の個性と調和する家

Modula目黒大岡山 外観
本山さんが現在手掛けている、モデューラ目黒大岡山も、見る人触れる人が驚く「遊び心」が表現された間取りになっています。
美しさを追求しながらも決して主張しすぎない品のある「シンプルさ」と細部まで計算された「遊び心」。
そんな相反する要素を見事に調和させた彼の設計には、住む人の感性を優しく刺激する深い思慮が込められています。
取材を通じて印象的だったのは、妥協を許さない探求心と洗練された美意識。それは建築家としてのセンスだけでなく、「住まう方の個性といかに調和させるか」という真摯な姿勢にも表れていました。
「こうすると使う人が便利だろうな」「ここを気に入ってもらえるだろうな」いつもそのような確信を持って、設計しているという本山さん。そのため、他人の意見や感想に振り回されることはないそう。
それでも、ぶれない自分軸の核に「住まう人との調和」があるからこそ、どこか尖っているのに、生活にしっかり寄り添ってくれる住まいが作れるのかもしれません。
本山さんが邸宅に込める独創的なデザインは、きっとこれからも多くの方の暮らしに特別な輝きをもたらしていくことでしょう。







