人と住まいのコラム
「不動産のギモン」が紹介する住まいのライフサイクルコスト

ライフサイクルコストで見る住まいの生涯費用

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不動産のギモン

家を購入する際に、建築にかかるイニシャルコスト(初期費用)の金額を気にする方が大半でしょう。 しかし、家にかかる費用は買ってそれでおしまいというわけではなく、暮らしのさまざまなシーンで費用が発生するものです。マイホームで暮らし始めてからの思わぬ出費に悩まされないためにも、家を建築する際に設計、建設、保守、解体までをすべて含めた「ライフサイクルコスト」について考慮することが大切です。

ライフサイクルコスト(LCC)とは

日々の生活の中で当然ながら、照明・冷暖房・水道などの光熱費が発生します。また、建築から十数年経てば外壁塗装や屋根の修繕が必要になり、家主の世代交代などによって家を一旦取り壊すことになれば、解体や廃棄にもお金がかかります。このように建築にかかる初期費用と住んでいる間の維持費そして廃棄にかかる費用を合計したものをライフサイクルコスト(Life cycle cost)と言います。

建物は木造や鉄筋コンクリートなど構造による法定耐用年数の違いはありますが、30~60年で建て替えられるのが一般的です。しかし、その期間で室内の設備や屋根、外壁などは着々と老朽化が進みます。エネルギーの無駄を省き、家族の建物の安全を守るためには定期的な修繕が不可欠ですが、できることなら設計の時点で修繕にかかる費用を最小限に抑えられる工夫を練っておきたいものです。

また、予期せぬ災害や社会情勢の変化によって大規模な修繕が必要になる恐れはいかなる時代においても避けることはできません。不測の事態に備えて火災保険や地震保険に加入するとしても、建物構造によっても月々の保険料にも差が生じます。家を買うときにはイニシャルコストだけでなく、ライフサイクルコストの観点から建物を評価することが大切なのです。

イニシャルコストはまさに氷山の一角

建物は竣工後から解体されるまでに建築費の約3倍の費用がかかると言われています。ライフサイクルコストの中で設計費が多くの割合を占めるわけではありませんが、設計の内容は建物のライフサイクルコストに大きな影響を与えることが考えられます。そのため、家の将来性を考えた設計を行っている業者を真剣に選ぶことが重要になるでしょう。

また、建築費用を必要以上にカットしたせいで修繕に莫大な費用が必要になるようでは、ライフサイクルコストはかえって膨張してしまいます。さまざまな修繕が必要になるのは家の建築から約10年が過ぎたころであり、お子様のいる家庭では家の修繕と子どもの進学の時期が重なることで家計を圧迫する恐れもあります。

省エネや住み心地の改善のために天井や壁に断熱材を入れるなら、リフォームより新築時のほうが費用を抑えられるのは明白です。また、冷暖房を使わなくても快適に暮らせる家の造りであれば、数十年にわたり無駄な光熱費を支払うこともありません。基本性能にこだわって家を建築することは費用だけでなく暮らしのストレスを軽減することができる賢い選択と言えるでしょう。

コストはトータルに考えることが大切

ライフサイクルコストには今まで紹介したものの他にも、税金や警備費、壁紙や床材などの消耗品費、清掃費などの項目が考えられます。無駄な出費を極力抑えるためにも、家の維持にかかる費用の構成を把握し、何にお金をかけて何を節約するのか、家を建てる前に中長期的な計画を立てることが必要になります。

住宅は30年、40年先の暮らしを見据えたうえで設計、建設、保守、解体までを入念に計画することが大切です。そのため、住宅にかかる購入費、つまり初期費用だけがすべてだと考えているとその後の暮らしで思わぬ出費がかさむことが想定されます。建築費の安さばかりに注目するのではなく。将来を踏まえたうえでの“暮らしの質”を重視しましょう。

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