人と住まいのコラム
「家づくりのホンネ」が紹介する天然素材の家が多くの人に支持される理由

天然素材の家が多くの人に支持される理由

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家づくりのホンネ

住宅選びの基準にはデザイン性や立地条件、価格など複数の要素があります。
中でも多くの人が注目するポイントに挙げるのが、住宅に使用される素材です。
低コストで大量生産を目的とした住宅には、建材や接着剤、塗料にホルムアルデヒドなど人体に有害な化学物質が含まれていることもあり、長年暮らすことで健康面の問題を引き起こす恐れがあります。そのため、家族の健康を考えるうえでも、体に優しい天然素材(自然素材)を使用した住宅の人気が高まっているのです。

天然素材で家をつくるメリット

天然素材とは人工的に作られたものではなく、自然の材料を用いた資材や建材のことです。分譲住宅の場合は使用する素材を選ぶことはできませんが、設計の段階から携われる注文住宅なら、天然素材で家をつくることができます。代表的な素材としては、無垢(むく)材や壁に塗る漆喰(しっくい)、珪藻土(けいそうど)などの左官材料が挙げられ、これらは古くから伝統的な日本家屋に使われてきた素材であり、家づくりの素材として再び注目を浴びています。

  • 無垢材

    加工をせずに一本の木から削りだした木材を、無垢と呼びます。純真を意味する「無垢」が示す通り、自然の木が持つ本来の風合いが魅力です。複数の木材を重ね合わせて作る合板のように接着剤は使いません。奈良県の重要文化財である法隆寺の五重塔の素材にも使用されており、建立から1300年経った現在でも健在なことから、強度に関しても立証されています。無垢材は夏場は湿気を吸収し、冬場は反対に放出するため、使用することで室内の湿度を一定に保ちやすくなります。

  • 漆喰

    消石灰に海苔や繊維質を加え、水で混ぜ合わせたものを漆喰といいます。空気中の二酸化炭素と結合して硬くなる性質を持ち、塗ることで落ち着いた白色になることから木造建築物との調和性が高く、伝統的な日本家屋の壁に採用されてきました。抗菌性もあり、もとの成分である消石灰の作用によってカビやダニの発生を抑えられます。また、耐火性能を持ち化学物質を含まないため、燃焼しても有毒物質が発生しません。

  • 珪藻土

    珪藻と呼ばれる植物性プランクトンの死骸が堆積した土から採取した素材が珪藻土です。断熱性と耐火性があり、壁塗りや七輪の素材として使われてきました。無数の孔があるため吸湿性が高く、夏場は湿気を吸収し、冬場には放出して空気の乾燥を防ぐため、壁の素材として室内の湿度調節の効果が期待できます。

天然素材には上記の3つのほかにも、瓦やタイルなどの陶器、畳、ふすまに使われる和紙などがあります。木材以外は原料を加工して作るものですが、その過程で人工的な化学物質を使用しないため、人体にも安全です。従来の日本家屋のように安心できる素材だけでつくった家で生活できることこそ、天然素材の家のメリットといえます。

シックハウス症候群の予防にも

近年の住宅にはコスト削減のためや断熱性、機密性を高めるため、化学物質を含んだ建材が多く用いられてきました。その結果、室内の空気が化学物質に汚染され、健康被害に発展するケースが増えてきているのです。それらの健康被害を総称して「シックハウス症候群」と呼びます。シックハウス症候群の症状はさまざまであり、目のかゆみや鼻づまり、のどの痛み、偏頭痛など多岐にわたります。

一方、天然素材でつくられた家は化学物質を含まないため、シックハウス症候群にかかる危険性を限りなくゼロに近づけることができます。ただし、中には天然素材として売り出されていても、化学物質を含んだものもあるため注意が必要です。製造の過程で多量の農薬を使ったイグサを使った畳など、化学物質が含まれている可能性があります。そのため、安全な天然素材を使った家を購入するには、信頼のできるメーカーに依頼することが大切です。

初期費用は家族の健康のための投資

天然素材を使用した住宅の安全性の高さに魅力を感じたとしても、建築時の費用が一般的な住宅よりもかさむため、金銭面を理由にためらってしまう人も多いようです。天然素材自体の価格が高いことと、熟練した職人の技術がなければ素材を活かした仕上がりにできないという理由により、どうしても余分にコストがかかってしまいます。

しかし、人生の大半の時間を過ごす住宅は、そこに住まう家族の将来の健康にも関係してきます。子供の成長を育む家だからこそ、天然の素材にこだわりたいものです。30年後の健康な暮らしまでトータルで考えると、決して高い買い物ではありません。

また、天然素材による癒しの効果も見逃せないポイントです。木の香りや温もりは住まう人に安心感を与え、漆喰や珪藻土の壁は空気を浄化することができます。天然素材の家は、長く住むほどに風合いを増すので、次第に愛着も湧いてくるでしょう。最新の化学素材ほどメンテナンス性は高くありませんが、自然に近い環境の中で暮らせることは精神的な豊かさを育みます。より自然に近い住まいであることが、天然素材の家が多くの人々から支持されている理由なのです。

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